−でしゃばるな−


「体調が悪いのでお休みさせて頂きます…」


今日、生まれて始めて会社をサボった。
AM6:00 いつもどおりの時間に目覚まし時計のベルが鳴った。

いつもどおり顔を洗い。いつもどおりYシャツを着て。いつもどおりネクタイを締め。
いつもどおりズボンを履いたつもりだったが、何故か短パン。

「よし!今日は仕事を休もう」
耳元で、そう誰かが囁いたように思ったが、それは明らかに自分の声だった。
短パンにYシャツとネクタイ姿で、
ウィンナーを焼き、卵を焼き、ブロッコリーを湯がいてミニトマトを洗い、
お弁当箱におにぎりと一緒にに詰めた。

「あはは 出来ちゃった。」

料理なんてほとんどしないのだけれども、何とか弁当が形になり大いに満足。

ネクタイを解きYシャツを脱いでTシャツを着て。弁当をリュックサックに入れてスニーカーを履いて
「行ってきまーす」とマンションを出た。

マンションの前の商店街を歩いていると店のシャッターを上げる自転車屋のオヤジと目が合った。

ここで「自転車一個くらはいな〜♪」阿呆っぽくそう言うとテンションが上がることを
僕は知っているので自転車を購入。

「自転車♪ 自転車♪ 買っちゃった〜♪これゃ♪これゃ♪こぐっきゃないっぽーん♪」
と30分も立ちこぎすると知らない道を走っていた。

海でも行くか・・・ 

「道知らないけど〜♪同じ方角に進んで行くと絶対に海に着く〜♪それが島国日本の〜♪
良いところなのさー♪」等とブツブツ歌いながら自転車を走らすのだけれども
海が見えない。

何回か山を登り下り海に着いたのは真夜中で、海の色は真っ黒だった。
黒い海が僕に言った。「可哀相な子。全てに疲れたのね。楽になろう。さあこっちへおいで」


僕はリュックサックから弁当を出し、黒い海に撒いた。

また明日から普通の生活が始まる。


[作]山田まるお


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