−歯医者−


「またかよ!今年に入って、もう3人目だぜ」歯医者が歯医者の集まりで歯医者に言った。「このままじゃまずいな、どうする?」

「また金を積んで、黙らせるしかないだろ」
昨日歯医者になったばかりの若い歯医者が先輩の歯医者に質問した。
「このままじゃまずいとか、金で黙らせるしかないとか、何なんですか?」
先輩歯医者がこたえた。
「そうかキミは、まだ知らないんだな、あの薬の事を 飲むだけで虫歯はもちろん歯に関する病気にいっさいかからない薬だ。その薬がまた、発明されたんだ」
若い歯医者が言った。
「なぜ、そんな良い薬があるのに世に出まわって無いんですか?」
先輩歯医者は怒りだした。
「キミは馬鹿か?そんな薬が出まわったら、我々の商売あがったりだよ。我々の家族は食べていけないよ。だから我々が金を出し合って、その薬を発明した奴らを今まで、黙らせてきたんじゃないか。でも、それも限界なのかもしれない。それを発明した奴は14人。今までは、だいたい5年に一人くらいの割合だったんだ。だが今年に入ってもう、3人目の発明者が現れた。私たちが出し合える金にも限界がある」
もう一人の歯医者が言った。
「あのチームは、どうなってるんですか?あのチームに出している金をこちらにまわしたらどうですか?」 その意見には今までだまっていた歯医者の会の会長も口をはさんだ。
「それは、できない。あの計画は順調に進んでいる」
また、若い歯医者が質問した。「あのチームとは何なんですか?」
先輩歯医者が説明する。
「私たちが金を出し合って作った、化学者のチームだよ。飲むだけで視力が良くなる薬を作るための研究をしているんだ」
若い歯医者がきいた。
「そんなことが、可能なんですか?」
先輩歯医者は得意げに言った。
「絶対に虫歯にならない薬ができてる世の中なんだぜ、飲むだけで視力が良くなる薬も、そう難しいことでもないんだよ。医学の進歩ってやつをなめちゃいかんよ、キミ」
若い歯医者が言った。
「僕も目が悪くて苦労しているんですよ。本当にそんな薬が、できたらすごいですね」
「そう、すごいぞ!その薬ができたら、その薬を発表しないみかえりに、眼科の連中だけでなく眼鏡やコンタクトレンズ業界からも大金が貰えるんだ。その金があれば、虫歯にならない薬を発明した奴を黙らせてもまだ、お釣がくる」
そう言って歯医者たちは笑った。
若い歯医者は
「世に出てないだけで、どこかで不老不死の薬ができているのかもしれないな」と呟いた。

[作]山田まるお


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