−悲しい気持ちは燃えないゴミです−



殴られながら、私は幼いころよくお母さんと散歩した、あの道を思い出していた。
あの道には大きな木があった。
「木を見に行こう」それが、お母さんと私の散歩の合図だった。
お菓子を持って散歩に行った。みかんを持って散歩にいった。
あの木は、もう無い。
お母さんも、もういない。

「木を見に行こう」
あの日はとても静かだった。
チェーンソウの音だけが響き渡っていた。
道幅拡大のため、木は殺されそうになっていた。
「止めろ」飛び出そうとした。わたしの腕をつかんでお母さんが言った。
「しかたないの!」
「うん」私は涙を拭きながら小さくうなずいた
あの時から、わたしは自分の意見が無くなったのかもしれない。
あの時暴れてるのが私の正義だった気がする。

「しかた無いことなんてないよ!母さん」

殴り倒された私に誰かが汚いものをかける。
「あってたまるか!」叫びながら私は立ち上がった。
「馬鹿が!」とか言われ、再び殴られたが、
ここが全てじゃ無い。逃げれば良い。まだまだ行ける。 そんな気持ちが生まれた。

夜、布団の中で笑いを噛み殺した。ガッツポーズも2・3回したような気がする。

[作]山田まるお


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