‐オレンジのイスの男‐

白い壁に白い扉の白い部屋の白いテーブルの横の赤いイスに座ってる女の子が言った。

「雨の中で鳩が、雨なのに雨に打たれながらなのに交尾してる。
雨の中で鳩が、雨なのに雨に打たれながらなのに酔っ払いが落としていったゲロ食ってる。
雨の中で鳩が、雨なのに雨に打たれながらなのに喧嘩してる。雨の中で鳩が、雨だからって諦めてる。
嫌になるんだ鳩見てるとムカムカする。何か人間みたいでイライラするんだ」

「鳩は何言ってるか解らないからワシも嫌いじゃ」
白い壁に白い扉の白い部屋の白いテーブルの横の黒いイスに座ってる老人が言った。
赤いイスの女の子が立ち上がって見下しながら吐き捨てるように言う。
「ジジイ!お前が一番、何言ってるかわかんねーよ」
その横でオレンジ色のイスに座ってる男が遠くを見ている。
ドアが開き緑のイスの男が入ってきて緑のイスに座る。
緑のイスの男が緑のイスをきしませながら揺れて倒れる。そして笑う。
さらに大きな声で赤いイスの女の子が笑う。
赤いイスの女の子が馬鹿笑いを止めオレンジ色のイスの男にからむ。
「文句あんのか?このヤロー!すましてこっち見てんじゃねーよ」
「別に文句なんか無いよ。人に気を使えない奴はバカさ、でも気を使いすぎて何もできなくなるのはそれ以下だからね」
そう言うとオレンジ色のイスの男はまた遠くを見た。
赤い色のイスの女の子が叫ぶ。
「いったい、お前はどこ見てんだよ」赤いイスの女の子はそう言ってオレンジのイスの男の視線を追う。
オレンジのイスの男が言った。
「俺の視線を追っても、その先は理解できないと思うよ」
「あん?」赤いイスの女の子は眉間を歪めてオレンジのイスの男の顔前2cmまで歩みより睨みつけた。
睨みつけたまま視線を外さず赤い女の子は隣で眠る黒い老人の頭をぶん殴る。
黒い老人はスローモーションで泣き崩れ、緑の男の子もつられて泣いた。
「フフフ」とオレンジの男が笑うと同時に赤い女の子はオレンジの男の鼻を噛み切った。
白い壁に白い扉の白い部屋の白いテーブルの横がオレンジ色のイスに座ってる男の血で赤く染まる。
白い壁に白い扉の白い部屋の白いテーブルの横がオレンジ色のイスに座ってる男の血で赤く染まったその隣で、黒いイスに座った老人と緑のイスに座った男の子が涙を流す。
白い壁に白い扉の白い部屋の白いテーブルの横の赤いイスに座ってた、今は立ってる派手な服を着た女の子が笑う。

同時刻、白い壁に白い扉の白い部屋の近所の公園で鳩に餌をあげてる黄色いヘルメットのおっさんが撃ち殺される。
銃声で餌を食ってた鳩は一旦、公園から居なくなるが警察の到着より早く戻ってきてこぼれ落ちた餌を無表情で貪ぼる。


[作]山田まるお


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