-冷蔵庫−




冷蔵庫が喋りだした。

「ピーピーピー牛乳の消費期限がきれています。処分して下さい。」

その声で、誕生日に友達からもらった九官鳥が目を覚まして叫びだした。

「誕生日おめでとう!ガーガーガー。誕生日おめでとう!ガーガーガー」

祭りのような大騒ぎで、九官鳥と冷蔵庫の主人である、低血圧で朝に弱い女も目を覚ました。

時計を見ると朝の六時だった。

女は立ちあがり、イラつきながらも九官鳥の機嫌をとり、賞味期限のきれた牛乳を処分した。

「これでいいんでしょ」と女が冷蔵庫に言った。冷蔵庫は調子に乗って説教しだした。

ピーピーピー貴方は私の中に物をつめこみすぎです、整理して下さい。

女は腹が立ち冷蔵庫を蹴飛ばした。

すると冷蔵庫は静かになった。

「一人暮らしでも、寂しくない会話できる冷蔵庫、新発売!なんて、だまされた、買うんじゃなかった。」

そう言ってベッドに戻り眠りにつこうとしたそのとき、また冷蔵庫が喋りだした。

「ピーピーピー牛乳の消費期限がきれています。処分して下さい。」

勿論、その声に反応して九官鳥も叫びだす。

「誕生日おめでとう!ガーガーガー。誕生日おめでとう!ガーガーガー」

女は飛び起きて冷蔵庫に言う。

「さっき処分したでしょ!」

冷蔵庫はそれに応えず、喋り続けた。

「ピーピーピー牛乳の消費期限がきれています。処分して下さい。」

九官鳥も負けていなかった。

「誕生日おめでとう!ガーガーガー。誕生日おめでとう!ガーガーガー」

「私が、蹴ったから故障したのかしら」女は冷蔵庫の整理をしてみたが、故障はなおらず叫び続けた。

女は最後の手段にでた電源を切ったのだ。

電源を切ったにもかかわらず。冷蔵庫の声は止まらなかった。勿論、九官鳥も止まらなかった。女は驚いて、説明書を見た。(停電にも負けないたっぷり充電型)と書いてあった。

女はあきらめて、充電が切れるまで待つことにした。

「ピーピーピー牛乳の消費期限がきれています。処分して下さい。」

「誕生日おめでとう!ガーガーガー。誕生日おめでとう!ガーガーガー」

「ピーピーピー牛乳の消費期限がきれています。処分して下さい。」

「誕生日おめでとう!ガーガーガー。誕生日おめでとう!ガーガーガー」

電源を切ってから四時間もすると、冷蔵庫は静かになった。

餌をやらなくなってから四日もすると、九官鳥も静かになった。

[作]山田まるお


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